こんにちは、AIに関する情報発信をしているフリーランスのナオキです。AIを活用した業務効率化やSNS運用のお手伝いをしています。
さて、今日は少し未来の話を皆さんと一緒に考えてみたいと思います。先日、AI研究の最前線を走るグーグルディープマインド社のCEO、デミス・ハサビス氏が、AIがもたらす未来について非常に示唆に富んだ発言をしました。彼の言葉は、私たち個人事業主や中小企業の経営者にとっても、決して他人事ではありません。今回はその内容を紐解きながら、これからの時代をどう乗り越えていくべきか、そのヒントを探っていきましょう。
AIがもたらす変化は、産業革命の100倍速い？
ハサビス氏が鳴らした警鐘の中で特に衝撃的だったのが、「AIの進化は産業革命より10倍速く、10倍大きな影響を社会に与える」という予測です。
皆さんは「産業革命」と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか。蒸気機関の発明によって工場での大量生産が可能になり、人々の暮らしや働き方が根底から変わった、歴史の教科書で学んだ大きな出来事ですよね。あの社会構造の変化は、100年以上の長い年月をかけてゆっくりと進みました。
しかし、ハサビス氏の言葉を借りるなら、AIによる変化はその10倍の速さで、しかも10倍の規模でやってくるというのです。少し計算してみると、これはつまり「100年かけて起こるような変化が、わずか10年で実現する」ことを意味します。言い換えれば、私たちは産業革命の100倍もの衝撃が複合的に押し寄せる時代を生きることになるのかもしれません。
私自身、日々の業務でAIツールに触れながらその進化の速さに驚かされていますが、ハサビス氏の視点に立つと、今私たちが目にしているのはまだ序章に過ぎないのだと、改めて身が引き締まる思いです。これまで常識とされてきたビジネスのやり方や成功法則が、あっという間に過去のものになる。そんな未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。
AI時代、仕事はどう変わるのか
これほど急激な変化が訪れるとなると、最も気になるのは「私たちの仕事はどうなるのか」ということではないでしょうか。
変化への適応は簡単ではない
ハサビス氏は、AIによって私たちの想像もつかないような新しい仕事が生まれる可能性を示唆しています。これは非常に希望の持てる話です。しかし同時に、社会全体がこの急激な変化に適応していくのは極めて困難だろう、とも指摘しています。
例えば、これまで多くの人が担ってきたデータ入力や書類作成、定型的な顧客対応といった業務は、AIの得意分野です。これらの仕事は今後、急速にAIに置き換わっていく可能性があります。もちろん、それによって人はもっと創造的な仕事に集中できるようになるという側面もありますが、その移行期間に社会がどう対応していくのかが大きな課題となります。
皆さんのビジネスにおいては、AIによってどんな変化が起こりそうでしょうか。今ある業務の中で、AIに任せられる部分、そして逆に、人間にしかできない価値ある部分はどこにあるのか。一度じっくり考えてみる良い機会かもしれません。
インターネットがもたらした変化のように
ここで少し、インターネットが登場した頃を思い出してみてください。当時は「インターネットが普及すれば、既存の産業が破壊される」といった悲観的な声も多く聞かれました。しかし、実際にはどうだったでしょうか。
ウェブデザイナー、ユーチューバー、SNSマーケター、インフルエンサーなど、インターネットがなければ生まれなかった新しい職業がたくさん誕生し、今では一つの大きな市場を形成しています。
AIもこれと同じように、全く新しい仕事を生み出すはずです。例えば、AIに的確な指示を与える「プロンプトエンジニア」や、私のように企業のAI導入を支援する「AIコンサルタント」といった職業は、ほんの数年前にはほとんど知られていませんでした。これからは、私たちがまだ名前も知らないような職業が次々と生まれてくるでしょう。
問題は、消えゆく仕事から新しい仕事への移行を、社会として、そして個人として、いかにスムーズに行うかです。そのスピードがあまりにも速いため、過去のどの技術革新とも違う、特別な備えが必要になるとハサビス氏は考えているのです。
これからの社会に必要な「新しい仕組み」とは？
この未曾有の変革期を乗り越えるために、ハサビス氏は社会全体での議論の必要性を強く訴えています。
彼は「最高の経済学者や哲学者たちが、AIが社会に与える影響と、我々が何をすべきか議論を始めるべきだ」と提言しています。これは非常に重要な指摘です。AIはもはや単なる技術の問題ではなく、私たちの生き方や社会のあり方そのものに関わる、哲学的な問いを投げかけているからです。
Universal Basic Provisionという考え方
その議論の一つのテーマとして、ハサビス氏は「Universal Basic Provision（ユニバーサル・ベーシック・プロビジョン）」という考え方に言及しています。日本語では「普遍的基礎的提供」と訳されます。
少し前に話題になった「ベーシックインカム（すべての人に現金を給付する制度）」と似ていますが、少し違います。ベーシックプロビジョンは、お金だけでなく、教育や医療、住居といった、人間が生活する上で不可欠な「サービス」を、社会がすべての人に提供するという考え方です。
なぜ今、このような仕組みが必要だと考えられているのでしょうか。それは、AIによって仕事のあり方が根本から変わり、従来の「働いて対価を得る」というモデルだけでは、多くの人の生活が立ち行かなくなる可能性が懸念されているからです。もし、生活の土台となる基礎的なサービスが社会によって保障されれば、人々は職を失うことへの過度な恐怖から解放され、新しいスキルの学習や、本当にやりたい創造的な活動に安心して挑戦できるようになるかもしれません。
これはまだ構想段階のアイデアですが、AIがもたらす豊かさを社会全体でどう分配し、誰もが人間らしい生活を送れるようにするか。そうした根本的な議論が、今まさに求められているのです。
経営者として、個人として、今からできること
壮大な未来の話に少し戸惑ってしまった方もいるかもしれません。しかし、この大きな変化の波は、私たち一人ひとりのビジネスや生活に確実に影響を与えます。では、私たちは今から何を準備すれば良いのでしょうか。
一つ目は、やはり「学び続ける姿勢」です。AIの進化は日進月歩です。昨日まで最先端だった技術が、今日にはもう古くなっていることも珍しくありません。最新の情報を積極的にキャッチアップし、自分のビジネスにどう活かせるかを常に考え続けることが重要になります。
二つ目は、「スモールスタートでAIを試してみる」ことです。いきなり大規模な導入を目指す必要はありません。まずは日々の業務の中で、文章作成や画像生成、情報収集などに無料のAIツールを使ってみるだけでも、その可能性と限界が見えてきます。小さな成功体験を積み重ねることが、大きな変化への対応力を養います。
そして三つ目は、「人間ならではの価値を磨く」ことです。AIがどれだけ進化しても、人との温かいコミュニケーション、共感する力、ゼロからイチを生み出す独創的なアイデア、複雑な状況を読み解く倫理観といった能力は、人間にしか持ち得ない価値であり続けます。自社の強みがどこにあるのかを再定義し、その人間的な価値をさらに高めていくことが、AI時代を生き抜く鍵となるでしょう。
ディープマインドCEOの警告は、私たちに未来への不安と同時に、大きなチャンスも示してくれています。この激動の時代を、ただ恐れるのではなく、変化の波を正しく理解し、しなやかに乗りこなしていく。そんな姿勢で、皆さんと一緒に未来への準備を進めていきたいと思います。
コメント