AIを活用したビジネスの効率化をサポートしているフリーランスのナオキです。
皆さんは「AI」と聞くと、何を思い浮かべますか。工場で正確に製品を組み立てるロボットアームや、人間のように会話するチャットボット、あるいは自動で車を運転してくれるシステムでしょうか。どれも素晴らしい技術ですが、実は今、AIの世界ではそれらをはるかに超える、壮大な変革が始まろうとしています。
今回は、AI研究の世界的権威であるフェイフェイ・リー氏が語った、AIの驚くべき未来についてお話しします。これは単なる未来予測ではなく、私たち個人事業主や中小企業のビジネスのあり方を根底から変える可能性を秘めた、とても重要な話です。少し先の未来を覗き見るような気持ちで、ぜひ最後までお付き合いください。
ロボットが現実世界で苦労する理由
まず、これまでのAIが直面してきた大きな課題について触れておきましょう。それは、AIを搭載したロボットが、私たちの住むこの「現実世界」でうまく動くことの難しさです。
リー氏は、ロボットが現実世界で活動するためには「空間認識力」が非常に重要だと指摘しています。空間認識力とは、簡単に言えば、自分の周りにあるモノの位置や形、自分との距離などを正確に理解する能力のことです。
私たち人間は、テーブルの上にあるコーヒーカップを当たり前のように掴むことができます。カップの形、持ち手の位置、中身がこぼれないような力の入れ具合などを、無意識のうちに判断しているからです。しかし、AIにとってはこれが非常に難しいタスクなのです。光の当たり方や見る角度が少し変わるだけで、同じカップでも違うものとして認識してしまうことがあります。
これまでのAI研究の多くは、この物理的な世界の制約をどうやって乗り越えるか、という点に力が注がれてきました。しかし、リー氏は「真の革新はそこではない」と、さらにその先を見据えているのです。
真の革新は「生成と再構築」から始まる
リー氏がこれからのAIの核になると強調するのが、「生成と再構築」という技術です。これは一体どういう能力なのでしょうか。
「生成」とは、AIがデータから学習し、全く新しいものをゼロから生み出す力のことです。例えば、キーワードをいくつか与えるだけで、まるでプロが描いたような美しいイラストを作り出したり、ビジネスメールの文面を自動で作成したりする技術がこれにあたります。
一方、「再構築」とは、既にある情報や形を組み合わせたり、作り変えたりして、新たな価値を持つものへと変化させる力です。
最近話題のChatGPTや画像生成AIは、まさにこの「生成と再構築」の技術を代表するものです。AIはもはや、人間が与えた指示を正確にこなすだけの存在ではありません。自ら新しいアイデアやコンテンツを「創造」するパートナーへと進化し始めているのです。
私自身、このブログ記事の構成を考えるときや、SNSで発信する際のキャッチコピーを練るときに、日常的に生成AIを活用しています。自分一人でウンウン唸っていても出てこなかったような斬新な切り口や、思わぬキーワードの組み合わせを提案してくれることもあり、私の創造性を何倍にも広げてくれる強力なアシスタントになっています。
皆さんのビジネスでは、この「生成」の力をどんな場面で活かせそうでしょうか。新商品のパッケージデザインのアイデア出し、お客様に送る感謝の手紙の文面作成、あるいはウェブサイトに掲載するブログ記事の草案作りなど、その可能性を考え始めるとワクワクしてきませんか。
物理世界を超えて「無限の仮想宇宙」へ
そして、この「生成と再構築」の力がもたらす未来として、リー氏はさらに壮大なビジョンを提示します。それは、人間が物理的な一つの世界を超え、「無限の仮想宇宙を実際に創り出せる」ようになるというものです。
仮想宇宙と聞くと、SF映画の世界のように聞こえるかもしれません。しかし、これはビジネスにおいて非常に実用的な意味を持ちます。AIが作り出す、現実そっくりの、あるいは全く新しい法則で動く仮想空間。これをビジネスの目的に合わせて、いくつも（マルチに）作り出せるようになる時代が来るというのです。
例えば、こんな活用法が考えられます。
一つ目は、シミュレーションです。これから新しくオープンする飲食店の内装を考えているとします。仮想空間の中に、現実そっくりの店舗をいくつも作り、テーブルの配置やお客様の動線をシミュレーションします。これにより、実際に工事を始める前に、最も効率的で居心地の良いレイアウトを見つけ出すことができるでしょう。
二つ目は、トレーニングです。建設現場で働くロボットを訓練したい場合、現実の現場で試すのは危険が伴います。しかし、AIが作り出した仮想の建設現場であれば、大雨の日や強風の日、予期せぬ障害物が現れる状況など、あらゆる過酷な環境を再現し、ロボットに安全かつ効率的に学習させることが可能です。
三つ目は、新しいアイデアの創造です。物理法則に縛られない自由な仮想空間で、アーティストや開発者が集まり、今までにない製品やサービスのアイデアを出し合う。そんなクリエイティブな活動の場としても活用できるかもしれません。
リー氏はこの新たな可能性について、「想像力は無限だ」と語っています。AIの力によって、私たちの頭の中にあるアイデアやイメージが、仮想空間という形で具現化され、試行錯誤できる時代がすぐそこまで来ているのです。
私たちが今からできること
「仮想宇宙なんて、なんだか壮大すぎて自分のビジネスには関係ないな」と思われた方もいるかもしれません。しかし、この大きな変化の波に乗るために、私たち中小企業の経営者や個人事業主が今からできることは、決して少なくありません。
まずは、身近な生成AIに触れてみることです。今では無料で使える文章生成AIや画像生成AIがたくさんあります。まずは遊び感覚で構いません。自分の仕事について質問してみたり、新しいサービスのキャッチコピーを考えてもらったりして、AIが何かを「生成」する能力を肌で感じてみてください。その驚きと面白さが、未来のビジネスを考える第一歩になります。
次に、自分の業務の「もしも」を想像してみましょう。「もし、あらゆるパターンの広告デザインをコストゼロで試せたらどうだろう」「もし、お客様一人ひとりに合わせた完璧な提案書を瞬時に作れたらどうだろう」。こうした想像力が、将来AIをビジネスにどう活かすかという具体的なアイデアに繋がっていきます。
AIは、もはや単なる作業効率化の道具ではありません。私たちの創造性を拡張し、ビジネスの可能性そのものを広げてくれる強力なパートナーになろうとしています。この大きな変化の時代に、AIと共に私たちの想像力をどこまでも広げ、新しいビジネスを創り出していきましょう。
私もAI専門家として、皆さんがこの新しい時代の波に乗り遅れることがないよう、これからも分かりやすく、実践的な情報を発信し続けていきたいと思っています。
