AIを活用したビジネスの効率化をお手伝いしているフリーランスのナオキです。
最近、AI界隈ではOpenAIが発表した動画生成AI「Sora」の話題で持ちきりですね。テキストを入力するだけで、まるで映画のようなリアルな動画が作れてしまう技術に、驚いた方も多いのではないでしょうか。中小企業の経営者や個人事業主の皆さんの中にも、プロモーションビデオやSNSコンテンツへの活用を考え始めた方がいらっしゃるかもしれません。
そんな革新的な技術の話題の裏で、開発元であるOpenAIのCEO、サムアルトマン氏の少し不思議な行動が注目を集めているのをご存知でしょうか。今回は、彼の行動の裏に隠された、AI時代の未来を読み解くヒントについてお話ししたいと思います。
自分の顔がAI動画に?アルトマン氏の不思議な行動
現在、動画生成AIのSoraはまだ一般公開されておらず、ごく一部の研究者やクリエイターしか利用できない、いわば招待制の状態です。それにもかかわらず、SNSなどではサムアルトマン氏本人の顔を使った、Sora製と思われる動画が次々と投稿され、拡散されています。
普通に考えれば、企業のトップが自分の顔を素材として、まだ開発途中のAIに自由に使わせるなんて、少し奇妙に感じませんか。もし不自然な動画や、意図しない文脈で顔が使われてしまえば、本人や企業のイメージダウンに繋がりかねません。多くの場合、著名人であればあるほど、こうした肖像の利用には慎重になるものです。
しかし、アルトマン氏はこの状況を静観するどころか、むしろ楽しんでいるかのようにすら見えます。これはいったい、どういうことなのでしょうか。単なる新しい技術の宣伝活動なのでしょうか。実は、専門家たちの間では、その裏にもっと深いたたかな戦略があるのではないかと囁かれています。
狙いは「意図的な口コミ」?AI時代の新たな宣伝戦略
彼のこの一連の行動は、「意図的なバイラル」を狙ったものではないかと言われています。バイラルとは、ウイルスが広がるように、口コミによって情報が爆発的に拡散していく現象のことです。つまり、彼が自身の顔をAIの素材として提供しているのは、計算された戦略だという見方です。
混乱を逆手に取るしたたかな戦略
皆さんも「ディープフェイク」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。AI技術を使って、特定の人物の顔を別の動画に合成し、あたかも本人が話したり行動したりしているかのように見せかける技術です。この技術が悪用され、偽の情報が拡散される事件が世界中で問題になっています。
AIが進化すればするほど、何が本物で何が偽物なのか、私たちの目では簡単に見分けがつかない時代がやってきます。アルトマン氏は、この「真実が揺らぐ時代」の混乱を、なんと自ら作り出し、逆手に取ろうとしているのかもしれません。
考えてみてください。彼の顔を使ったAI動画がネット上に溢れかえれば、人々は「今見ているこのサムアルトマンは、本物だろうか?それともAIが作った偽物だろうか?」と疑うようになります。彼自身が、その混乱の中心に立つことで、ある重要なメッセージを世界に伝えようとしているのではないでしょうか。
すべては「ワールドコイン」のために?壮大なプロジェクトへの布石
ここで、アルトマン氏がSoraとは別に進めている、もう一つの巨大なプロジェクトが関係してきます。それが「ワールドコイン」です。
「ワールドコイン」って何?
ワールドコインと聞くと、仮想通貨の一種かと思うかもしれませんが、その本質は少し違います。一言で説明するなら、「生体認証を使った、デジタル世界の身分証明書」のようなものです。
具体的には、「オーブ」と呼ばれる球体のデバイスで一人ひとりの眼の虹彩(眼の色のついた部分)をスキャンします。虹彩のパターンは指紋と同じように人それぞれ全く異なり、偽造が極めて困難です。この虹彩データを登録することで、「AIではなく、唯一無二の人間である」ことをデジタル上で証明しようというのが、このプロジェクトの核となる考え方です。

壮大な社会実験としてのSora活用
ここまでお話しすると、もう繋がりが見えてきたかもしれません。
アルトマン氏は、Soraを使って自らの「偽物」を大量に生み出しています。その結果、世界中の人々が「本物と偽物の区別がつかない」という問題を身をもって体験することになります。その上で、彼はこう問いかけているのかもしれません。
「ほら、これからの時代、AIによって偽物はいくらでも作れてしまいます。そんな世界で、あなたはどうやって自分が本物の人間だと証明しますか?その答えが、このワールドコインなのです」と。
つまり、自身の顔を使った一連の騒動は、ワールドコインという本人確認システムの重要性を世界中に知らしめるための、壮大なデモンストレーションであり、社会実験だという見方ができるのです。AI技術の最前線に立つ彼自身が、AIによって「本物であること」を証明する必要性に直面している。これは、なんとも皮肉な状況と言えるでしょう。
私たちに問われる「見極める力」
この話は、遠い世界の大企業トップだけの問題ではありません。私たち個人事業主や中小企業の経営者にとっても、決して他人事ではないのです。
例えば、いつもやり取りしている取引先の担当者から、オンライン会議への招待ではなく、動画メッセージが送られてくることが増えるかもしれません。その動画は本当に本人でしょうか?あるいは、SNSで見かけた魅力的な商品のレビュー動画は、実在の人物によるものなのでしょうか?
これからビジネスでAIを活用していく私たちだからこそ、その便利な側面に光を当てるだけでなく、こうした影の部分、リスクについても深く理解しておく必要があります。そして、日々流れてくる情報の中から、何が真実で、何が作られたものなのかを見極める力、いわゆる「デジタルリテラシー」をこれまで以上に磨いていくことが求められます。
サムアルトマン氏の行動は、私たちにAIがもたらす新しい時代の光と影、そして「人間であることの証明」という根源的な問いを投げかけています。技術の進化は止まりません。大切なのは、私たち一人ひとりが、この変化にどう向き合い、賢く乗りこなしていくかです。
皆さんは、このAIが当たり前になる未来を、どのように歩んでいきますか?これからも、ビジネスに役立つAIの情報を、こうした少し未来を考える視点も交えながら、発信していきたいと思います。