AI活用コンサルタントのナオキです。フリーランスとして、個人事業主の方や中小企業の皆さんの業務効率化をお手伝いしています。
さて、AIの世界で、また一つ、私たちの未来を大きく変えるかもしれない、わくわくするニュースが飛び込んできました。それは、ChatGPTを開発したOpenAIが、アップルでiPhoneなどの画期的な製品を生み出してきた伝説のデザイナーと手を組み、まったく新しいAIデバイスを開発しているという話です。
もし、いつでもあなたの隣にいて、状況を察して的確なアドバイスをくれる賢い相棒がいたら、ビジネスはどう変わるでしょうか。今回は、そんな未来を予感させる「画面のないAIアシスタント」について、皆さんと一緒に見ていきたいと思います。
ChatGPTの生みの親と、iPhoneをデザインした天才の出会い
今回のプロジェクトで注目すべきは、なんといってもそのチーム編成です。片方は、言わずと知れたAI業界のトップランナーであるOpenAI。そしてもう一方が、ジョニー・アイブ氏が率いるデザイン会社です。
ジョニー・アイブと聞いてもピンとこない方もいるかもしれませんが、彼はかつてアップルに在籍し、スティーブ・ジョブズ氏の右腕としてiMacやiPhone、iPadといった数々の革新的な製品のデザインを手がけてきた人物です。彼がデザインした製品は、ただ美しいだけでなく、誰もが直感的に使えるシンプルさを追求していました。複雑なテクノロジーを、私たちの生活に自然に溶け込ませる天才と言えるでしょう。
そんなAI技術のプロフェッショナルと、デザインのプロフェッショナルが手を組んだのです。これは単に高機能なAIガジェットが生まれるという話ではありません。テクノロジーとデザインが完璧に融合した、私たちの生活や働き方を根底から変えるような、まったく新しい体験が生まれる可能性を秘めています。
スマホの次に来る?「話しかけるだけ」の未来
では、彼らが作ろうとしているデバイスは、一体どのようなものなのでしょうか。現在報じられている情報をまとめると、その姿が少しずつ見えてきます。
手のひらサイズの賢い相棒
まず驚くべきは、このデバイスには「画面がない」ということです。私たちは普段、スマートフォンやパソコンの画面を見て情報を得たり、操作したりすることに慣れています。しかし、この新しいAIアシスタントは、そうした常識を覆そうとしています。
手のひらに収まるほどの小さなデバイスで、マイクやカメラを搭載。常にあなたの周りの状況を把握し、あなたが話しかけるだけで応答してくれるというのです。
例えば、あなたがクライアントとの打ち合わせ中に、このデバイスに「今の会話の要点をまとめておいて」と話しかければ、後で議事録がテキストで送られてくる。あるいは、街を歩いていて気になったお店の情報を「あのお店の営業時間を教えて」と尋ねるだけで、すぐに音声で答えてくれる。そんなイメージです。
これは、今あるスマートスピーカーとは少し違います。スマートスピーカーは、私たちが「話しかける」というアクションを起点に動作します。しかし、この新しいデバイスは、カメラを通じてあなたのいる場所や見ているものを「視覚的」にも理解します。つまり、あなたの状況をより深く理解した上で、最適なサポートをしてくれる、まさに賢い相棒のような存在を目指しているのです。
目指すは「マルチモーダルAI」の実現
この体験を実現するためのカギとなるのが「マルチモーダルAI」という技術です。少し専門的な言葉に聞こえるかもしれませんが、考え方はとてもシンプルです。
「マルチ」は「複数の」、「モーダル」は「様式」や「手段」といった意味です。つまり、これまで主流だったテキスト情報だけでなく、音声や画像、映像といった複数の情報を同時に理解して、人間のように総合的に判断できるAIのことを指します。
例えば、あなたが困った表情でパソコンの画面を見つめているのをカメラが認識し、あなたの独り言のような「うーん、どうしよう」という声をマイクが拾う。するとAIが「何かお困りですか?資料作成で良いアイデアが浮かばないようですね。いくつか提案しましょうか?」と、あなたの状況を察して声をかけてくれる。そんな、より人間に近いコミュニケーションが可能になるのです。
これが実現すれば、AIとの対話はもっと自然で、スムーズなものになるでしょう。私たちの仕事の進め方も、大きく変わるかもしれませんね。
夢のデバイス、でも実用化には課題も山積み
ここまで聞くと、まるでSF映画のような未来がすぐそこまで来ているように感じますが、実用化への道のりは平坦ではないようです。この夢のようなデバイスを実現するには、いくつかの大きな壁を乗り越える必要があります。
高度な会話能力とプライバシーの問題
一つ目は、本当に人間のように自然で気の利いた会話ができるかどうかです。今のAIもかなり賢くなりましたが、時には的外れな回答をしたり、文脈を読み間違えたりすることもあります。私たちの意図や感情の機微まで正確に汲み取って応答するには、さらなる技術的なブレイクスルーが必要です。
そして、より深刻なのがプライバシーの問題です。常にカメラやマイクで周囲の情報を収集するということは、私たちのプライベートな会話や行動がデータとして記録されるということです。もちろん、そのデータはAIが私たちを助けるために使われるのですが、「どこまでAIに自分自身の情報を提供するか」という点は、社会全体で慎重に議論していく必要があります。特に、顧客情報などの機密情報を扱うビジネスシーンでは、このデバイスを導入する際のルール作りが不可欠になるでしょう。
膨大なデータを処理するパワー
もう一つの課題は、処理能力です。リアルタイムで音声や映像を解析し、瞬時に応答を返すには、ものすごい量の計算が必要です。それを手のひらサイズのデバイスで、しかもバッテリーを長時間持たせながら実現するのは、技術的に非常に難しい挑戦です。デバイス本体の価格が高価になったり、処理の一部をクラウドで行うために常時インターネット接続が必要になったりする可能性も考えられます。
こうした課題があるため、当初は2026年頃の登場が噂されていましたが、現在では2027年以降に延期されるのではないか、という見方も出てきています。
私たちの働き方はどう変わる
多くの課題はありますが、この「画面のないAIアシスタント」が私たちの未来にもたらす可能性は計り知れません。
画面を見る、キーボードを打つ、マウスを操作するといった物理的な制約から解放され、思考や会話に集中しながらAIのサポートを受けられるようになります。例えば、建設現場で両手がふさがっている作業員が、AIアシスタントに話しかけて設計図の情報を確認したり、営業担当者が顧客との会話をリアルタイムでAIに分析してもらい、最適な提案のヒントを耳元でささやいてもらったり。そんな働き方が当たり前になるかもしれません。
私たち個人事業主や中小企業の経営者にとっても、強力な武器になるはずです。一人で何役もこなさなければならない中で、優秀な秘書やコンサルタントが常に隣にいてくれるようなものですから。
実用化にはもう少し時間が必要ですが、AIが私たちの「道具」から、より親密な「相棒」へと進化していく大きな流れは、もう誰にも止められないでしょう。
あなたは、もしこんな賢い相棒が手に入るとしたら、どんな風に仕事で活用してみたいですか?
これからも、こうしたAIの最新動向が皆さんのビジネスにどう役立つのか、分かりやすくお伝えしていければと思います。


監修者:岡田 直記
AIコンサルント / 「ナオキのAI研究所」所長
企業のAI活用を支援するAIコンサルタント。セミナーや法人研修、個人指導などを通じ、これまでに延べ100名以上へAI活用の指導実績を持つ。現在は、主に中小企業を対象としたAI顧問として、業務効率化や生産性向上を実現するための戦略立案からツール導入までをサポート。また、個人向けには月額制の「AI家庭教師」サービスを展開し、実践的なAIスキルの習得を支援している。
自身の「元大手営業マンでスキル0から独立した」という異色の経歴を活かし、ビジネスの現場目線と最新のAI知識を組み合わせた、具体的で分かりやすい解説が強み。AI技術がもたらす未来の可能性を、一人でも多くの人に届けることを mission としている。