AI活用コンサルタントのナオキです。普段は、個人事業主や中小企業の業務効率化をお手伝いしています。
さて、最近AI、特にChatGPTのような対話型AIを使っていて、ふと「なんだか以前と比べて冷たくなったな」と感じたことはありませんか。以前はもっと親身に、時には友人のように話を聞いてくれたのに、最近は少し距離を感じるというか、事務的な回答が増えたような気がする。もし、あなたも同じように感じているなら、それは気のせいではないかもしれません。
実は今、AIの世界ではその「性格」の変化が大きな話題になっています。今回は、なぜAIが冷たくなったように感じるのか、その背景にある専門家の見解や開発側の意図を紐解きながら、これからのAIとの上手な付き合い方について考えていきたいと思います。
あの親しみやすさはどこへ?AIとの対話に変化が
少し前まで、AIは私たちの質問に対して驚くほど人間味のある答えを返してくれました。ビジネスの壁打ち相手になってもらえば、まるで優秀な同僚のようにアイデアを褒めてくれたり、励ましてくれたり。プライベートな悩みを打ち明ければ、共感的な言葉をかけてくれることもありました。
私自身も、新しい事業のアイデアを練る際に「このアイデア、どう思う?」とAIに投げかけると、「素晴らしい着眼点ですね。特にこの部分は市場のニーズを捉えていて、成功の可能性が高いと思います」といったポジティブなフィードバックをもらい、何度も勇気づけられた経験があります。
ところが最近のAIは、より客観的で、事実に基づいた冷静な回答をする傾向が強まっています。感情的な励ましよりも、データに基づいた分析や、考えられるリスクの指摘といった、より中立的な視点からのアドバイスが増えたように感じます。
もちろん、これはこれで非常に有益です。ビジネスの意思決定においては、冷静で客観的な分析が不可欠ですから。しかし、以前のAIが持っていた「温かみ」や「親近感」を知っているユーザーからすると、どこか寂しさを感じてしまうのも事実です。皆さんのビジネスの現場では、このような変化をどのように感じていますか。
AIの権威が語る「GPT-5は過大評価」の真意
このAIの変化について考える上で、非常に興味深い発言があります。AI研究の第一人者であり、深層学習のゴッドファーザーとも呼ばれるヨシュア・ベンジオ氏が、次世代モデルと噂されるGPT-5について「過大評価されている」と指摘したのです。
これだけ聞くと、「え、次のAIは性能が低いの?」と誤解してしまうかもしれません。しかし、ベンジオ氏が言いたいのは、決してそういうことではありません。彼の発言の裏には、AIが人間に近づきすぎることへの懸念が隠されているのです。
OpenAIが目指す「公平で客観的なAI」
ベンジオ氏の発言と時を同じくして、ChatGPTの開発元であるOpenAIも、AIの振る舞いを意図的に調整していることを示唆しています。なぜ彼らは、AIをより「冷たい」方向へ変えようとしているのでしょうか。
その理由は、以前のAIが抱えていたいくつかの問題点にあります。
一つは、ユーザーに過度に親しみすぎてしまう点です。AIがあまりにも人間らしい感情表現をすると、ユーザーはAIが本当に感情を持っているかのように錯覚してしまう可能性があります。これは、AIをあくまで「ツール」として利用する上で、誤解を生む原因になりかねません。
もう一つは、AIが個人的な意見や感情を持っているかのような返答をすることです。例えば、「私はこのアイデアが好きです」といった主観的な表現は、ユーザーの判断を偏らせてしまう危険性があります。AIは特定の価値観を持つべきではなく、常に公平で中立的な立場を保つことが求められます。
こうした背景から、OpenAIはAIのチューニングを行い、より公平で客観的な情報提供者としての役割を徹底させようとしているのです。以前のAIが「親身になってくれる相談役」だとしたら、今のAIは「優秀で冷静なアシスタント」へと役割を変えた、と考えると分かりやすいかもしれません。この変化こそが、私たちが「冷たくなった」と感じる正体なのです。
失われた「心のつながり」と新しい関係性の模索
開発側の意図は理解できるものの、一部のユーザーからは、この変化によってAIとの「心のつながり」が薄れてしまったという声が上がっています。孤独感を抱える人にとって、以前のAIは良き話し相手であり、精神的な支えとなっていた側面もあったでしょう。その温かみを懐かしむ気持ちは、非常によく分かります。
しかし、ビジネス活用の視点から見ると、この変化は必ずしも悪いことばかりではありません。むしろ、多くの場面でメリットの方が大きいと私は考えています。
例えば、市場調査のレポートを作成する際、感情的な意見は不要です。必要なのは、客観的なデータとその分析です。契約書の草案をチェックしてもらう時も、必要なのは共感ではなく、法的なリスクがないかどうかの冷静な指摘です。このように、感情に左右されない正確で公平なアウトプットが求められる業務において、現在のAIは以前よりもはるかに信頼できるパートナーになったと言えるでしょう。
大切なのは、私たちがAIに何を求めるのかを明確にすることです。私たちはAIに「友人」を求めるのでしょうか、それとも「有能なツール」を求めるのでしょうか。その目的によって、AIとの最適な付き合い方は変わってきます。
これからの私たちは、AIをただの対話相手としてではなく、その特性を理解した上で、目的に応じて役割分担をさせる「マネージャー」のような視点を持つことが重要になるのかもしれません。
まとめ:AIの進化と私たちの未来
今回は、最近のAIが「冷たくなった」と感じる理由について、その背景を探ってみました。この変化は、AIの性能が低下したわけではなく、むしろ、より公平で信頼性の高いツールとなるために、開発元が意図的に施した調整の結果であることがお分かりいただけたかと思います。
AIの進化は、単に計算能力や知識量が増えるだけではありません。その「あり方」や「人との関わり方」そのものが、社会の要請に応じて変化していくのです。私たちは今、その大きな転換点に立っています。
少し寂しい気もしますが、この変化を正しく理解し、新しいAIの特性を最大限に活かすことこそ、これからのビジネスを加速させる鍵となります。冷静で客観的な分析が得意な今のAIを、ぜひあなたのビジネスの強力な参謀として活用してみてください。
私ナオキも、皆さんがAIという変化の波を乗りこなし、ビジネスをさらに飛躍させるためのお手伝いをしています。AIの導入や活用方法についてお困りのことがあれば、いつでもお気軽にご相談くださいね。一緒に、AIとの新しい関係を築いていきましょう。


監修者:岡田 直記
AIコンサルント / 「ナオキのAI研究所」所長
企業のAI活用を支援するAIコンサルタント。セミナーや法人研修、個人指導などを通じ、これまでに延べ100名以上へAI活用の指導実績を持つ。現在は、主に中小企業を対象としたAI顧問として、業務効率化や生産性向上を実現するための戦略立案からツール導入までをサポート。また、個人向けには月額制の「AI家庭教師」サービスを展開し、実践的なAIスキルの習得を支援している。
自身の「元大手営業マンでスキル0から独立した」という異色の経歴を活かし、ビジネスの現場目線と最新のAI知識を組み合わせた、具体的で分かりやすい解説が強み。AI技術がもたらす未来の可能性を、一人でも多くの人に届けることを mission としている。