AIを活用したビジネスの効率化をお手伝いしているナオキです。
皆さんは、AIと聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか。「大企業が莫大な予算をかけて開発する最先端技術」「なんだか難しくて、自分たちには縁遠いもの」そんな風に感じている方も少なくないかもしれません。私自身も、お客様とお話しする中でそういった声をよく耳にします。
しかし、もし「ノートパソコン一台と、ほんの少しの費用で、自分だけのオリジナルAIを作れる時代が来た」と言われたら、どうでしょう。今日は、そんなAI開発の常識を覆すかもしれない、画期的なニュースについてお話ししたいと思います。AIに少しでも興味のある方なら、きっとワクワクするはずです。
AI開発のハードルが劇的に下がる「nanochat」とは
先日、AI研究の世界で有名なアンドレ・カルパティ氏が「nanochat」というプロジェクトを公開しました。これは、簡単に言えば「小さなAIをゼロから自分で作るための設計図と道具一式」のようなものです。これまで専門家だけの領域だったAI開発が、ぐっと身近になる可能性を秘めています。
わずか1万5千円でAIをゼロから育成
このnanochatの最大の魅力は、その手軽さです。なんと、高性能なクラウドサービスを使えば、およそ4時間、費用にして100ドル(日本円で約1万5千円)程度で、簡単な会話ができるAIを開発できてしまうのです。
ここで作られるのは、ChatGPTのような超巨大なAIではなく、SLM(スモールランゲージモデル)と呼ばれる小型のAIです。大規模言語モデル(LLM)の弟分のようなもので、特定の役割に特化させやすい、コンパクトで扱いやすいAIだと考えてください。
たった8000行ほどのシンプルなプログラムコードで、AIに言葉の基本を教えるところから始め、簡単な詩や物語を作らせたり、質問に答えさせたりするところまで実現できます。昔は専門の研究者チームが何ヶ月もかけていたようなことが、今や半日と少しの費用で体験できる時代になったのです。これには、私も本当に驚きました。
開発に必要なものがすべて揃っているオールインワン設計
さらに素晴らしいのは、このnanochatがAI開発に必要な工程をすべて網羅している点です。
AIの基礎学習、つまりAIに言葉のルールや世界の常識を教え込むところから始まります。そして、ファインチューニングと呼ばれる細かな調整作業。これは、AIに自社の専門知識や独自の言い回しなどを追加で教え込み、より自社のビジネスに合ったAIへとカスタマイズする工程です。
さらには、開発したAIと実際に会話するためのウェブ画面まで用意できる仕組みが含まれています。これまでは、それぞれの工程で別々の専門知識やツールが必要でしたが、nanochatはそれらが一つにまとまっています。まるで、必要な食材とレシピがすべて入った「AI開発の料理キット」のようですね。
なぜ今、この「nanochat」が重要なのか
このニュースは、単に「安くAIが作れるようになった」というだけではありません。私たち個人事業主や中小企業のビジネスのあり方を、根本から変える可能性を秘めています。
「AIを使う」から「AIを育てる」へのシフト
これまでのAI活用は、すでに完成されたChatGPTなどのサービスを「使う」ことが中心でした。もちろん、それでも業務は十分に効率化できます。しかし、nanochatの登場は、「自社のビジネスに特化したオリジナルのAIを育てる」という、新しい選択肢を私たちに示してくれました。
例えば、どんなことができるでしょうか。
あなたが美容室を経営しているなら、お客様の過去の施術履歴や会話の中での好みを学習させ、次回の来店時に最適なヘアスタイルを提案してくれるAIアシスタントを作れるかもしれません。
製造業であれば、自社製品に関する膨大なマニュアルや過去のトラブルシューティング事例を学習させ、社内の技術的な質問に24時間答えてくれる専門家AIを育成できるでしょう。
私のようにSNSの運用をしているなら、自分のブログ記事やSNSの投稿スタイルを学習させ、新しいコンテンツのアイデア出しや下書きを手伝ってくれるパートナーAIを持つことも夢ではありません。
あなたのビジネスに、誰よりも詳しく、文句も言わずに働いてくれる専属の新人アシスタントを育てる。そんな感覚に近いかもしれませんね。
AIリテラシー向上のための最高の教材
開発者であるカルパティ氏は、このnanochatを自身のAI入門講座の課題として使う予定だと語っています。これは、AIの仕組みを「魔法の箱」としてではなく、その中身を理解しながら学ぶ絶好の機会が提供されることを意味します。
経営者自身がAIの仕組みを少しでも理解することで、外部の業者にAI導入を丸投げするのではなく、「自社のこの業務には、こんなデータを使って、こういうAIを作れば効果的なはずだ」と、より的確な判断ができるようになります。AI活用の主導権を自社で握る。そんな未来が、もうすぐそこまで来ているのです。
私たち中小企業や個人事業主はどう向き合うべきか
この話を聞いて、「面白そうだけど、自分には難しそうだ」と感じた方もいるかもしれません。ご安心ください。今すぐプログラミングを学んで、AI開発者になる必要はありません。
まずは「自分なら何ができるか」を想像してみる
大切なのは、このような技術が登場したという事実を知り、「もし自分たちのビジネスに専用のAIがいたら、どんな業務を任せられるだろう?」と想像を膨らませてみることです。
あなたの会社の商品やサービスについて、誰よりも詳しいAIがいたら、どんな仕事を任せてみたいですか。お客様からのよくある質問への回答でしょうか。それとも、新入社員向けの研修資料の作成でしょうか。まずは、この問いを社内で話し合ってみるだけでも、大きな一歩です。
小さな一歩を踏み出すための準備
そして、未来のAI育成に備えて、今からできることもあります。それは、社内に眠っているデータを整理しておくことです。
例えば、業務マニュアル、過去の顧客とのメールのやり取り、社内チャットのログ、日報など。これらはすべて、将来AIを育てるための貴重な「教科書」になります。今はただの文字の羅列に見えるかもしれませんが、これらのデータが、あなたのビジネスを加速させる独自のAIを生み出す源泉になるのです。
まとめ
今回は、AI開発を誰もが手に届くものに変える可能性を秘めた「nanochat」プロジェクトについてご紹介しました。
これは単なる技術的なニュースではなく、私たち中小企業や個人事業主が、ビジネスのあり方を根本から見直すきっかけを与えてくれるものです。「AIを使いこなす」という視点から一歩進んで、「自社だけのAIを育てる」という新しい選択肢が生まれました。
私もこの大きな変化の波に乗り遅れないよう、早速このnanochatを試してみようと考えています。その過程で得られた気づきや学びは、またこのブログで皆さんと共有させていただきますね。
AIの活用について、何かお困りのことやご相談したいことがあれば、いつでもお気軽にお声がけください。あなたのビジネスの可能性を、一緒に広げていきましょう。


監修者:岡田 直記
AIコンサルント / 「ナオキのAI研究所」所長
企業のAI活用を支援するAIコンサルタント。セミナーや法人研修、個人指導などを通じ、これまでに延べ100名以上へAI活用の指導実績を持つ。現在は、主に中小企業を対象としたAI顧問として、業務効率化や生産性向上を実現するための戦略立案からツール導入までをサポート。また、個人向けには月額制の「AI家庭教師」サービスを展開し、実践的なAIスキルの習得を支援している。
自身の「元大手営業マンでスキル0から独立した」という異色の経歴を活かし、ビジネスの現場目線と最新のAI知識を組み合わせた、具体的で分かりやすい解説が強み。AI技術がもたらす未来の可能性を、一人でも多くの人に届けることを mission としている。