AIを活用したビジネスコンサルティングを行っているナオキです。
最近、クライアントの方々とお話ししていると、「AIの進化が速すぎて、正直ついていけないよ」という声をよく耳にします。本当にその通りですよね。チャットAIが一般に広まってからまだ数年も経っていないのに、その性能は日進月歩で向上しています。
そんな中、AI業界の最前線を走る人物から、私たちの想像を少し、いえ、かなり超えるような未来予測が飛び出してきました。今回は、ChatGPTの強力なライバルである「Claude」を開発したAnthropic社の共同創業者、ジャック・クラーク氏が語ったAIの未来について、個人事業主や中小企業の経営者の皆さんにも分かりやすく、そして私たちのビジネスにどう関わってくるのかを一緒に考えながら解説していきたいと思います。
現在のAIはまだ「自分で学べない」
まず、クラーク氏の話を理解する上で大切なポイントからお話しします。それは、現在のAIはまだ「自己改善」ができない、という事実です。
AIはまだ一人で成長できない
AIがすごい勢いで賢くなっているように見えるので、AI自身が勝手に学習してどんどん進化しているように思えるかもしれません。しかし、現状はそうではありません。今のAIは、人間が大量のデータを与え、人間が設定したルールの中で学習を繰り返している段階です。
たとえるなら、人間の子どもが自転車の乗り方を一度覚えたら、あとは自分で練習してどんどん上達していきますよね。転んだ経験からバランスの取り方を学び、より速く、より巧みに乗りこなせるようになります。これが自己改善です。
一方、今のAIは、もし性能を上げたければ、開発者である人間が新しいデータを与えたり、プログラムの構造自体を改良したりする必要があります。つまり、まだ人間の手助けがなければ、次のステップに進めないのです。
でも、着実に「自分で判断する力」は身につけている
しかし、だからといってAIの進化が遅いわけでは決してありません。AIは「自律性」、つまり自分で考えて判断する能力を着実に高めています。
クラーク氏が指摘するように、Claudeのような高性能なAIモデルは、すでに新しい技術の研究開発を加速させたり、複雑なプログラミング作業を手伝ったりしています。
私自身の体験談をお話しすると、先日クライアントの業務を効率化するための小さなツールを開発した際、プログラムの骨格部分をAIに作ってもらいました。結果として、通常であれば丸一日かかっていた作業が、ほんの数時間で完了しました。これは、AIが開発という創造的な作業の一部を「自律的」に担い始めている証拠です。この精度がさらに上がっていけば、人間は「何を作りたいか」を伝えるだけで、AIがすべてを形にしてくれる未来も、そう遠くないのかもしれません。
桁違いの未来予測「AIが次のAIを設計する日」
ここからが本題です。クラーク氏は、このAIの進化がとんでもない規模の投資によって、さらに加速していくと予測しています。そしてその先には、SF映画のような世界が待っているかもしれません。
数兆円から数十兆円へ。常識外れのAI投資
クラーク氏によると、AI開発への投資額は、今年には数兆円規模、そして来年にはなんと数十兆円規模に達する可能性があるそうです。
なぜ、これほどまでのお金がAI開発に集中しているのでしょうか。
その背景には、OpenAI社が半導体メーカーのNVIDIA社と10兆円規模の投資を協議しているといった動きがあります。半導体は、AIが考えるための「脳みそ」にあたる重要な部品です。つまり、世界トップクラスのAI開発企業が、最高の「脳みそ」を手に入れるために、国を動かすほどのお金を投じようとしているのです。
人間の手を離れ、AIがAIを生み出す可能性
では、この莫大な資金は何のために使われるのでしょうか。その最終的な目標の一つとしてクラーク氏が示唆しているのが、「AI自身が、次のAIモデルの設計を主導する」という未来です。
これは一体どういうことでしょうか。
簡単に言うと、人間が「もっと人間のように自然な会話ができて、専門的な質問にも答えられるAIを作りたい」といった大まかな目標をAIに伝えるだけで、AIが自ら最適な設計図を考え、必要なプログラムを書き始め、新しいAIを創り出してしまう、というイメージです。
まるで映画の話のようですが、AI業界のトップリーダーたちは、これを現実的な目標として捉え、巨額の資金を投じているのです。
AIは「道具」から「生命体」へ?私たちの向き合い方
このような未来予測を聞くと、期待よりも不安を感じる方もいるかもしれません。クラーク氏は、AIを非常に示唆的な言葉で表現しています。
「理解しがたい生命体」という表現の意味
彼は、これからのAIを「単なる道具ではなく、理解しがたい生命体のような存在」と呼びました。
これは、AIが感情を持ったり、意識を持ったりするという意味ではありません。AIの思考プロセスや判断の仕組みが、人間の脳とは全く違う原理で、あまりにも複雑になりすぎて、私たち人間にはその全容が理解できなくなる可能性がある、ということです。
私たちが普段使っているパソコンの表計算ソフトや文書作成ソフトは、あくまで便利な「道具」です。しかし、自分で自分を改良し、新しい自分を生み出すAIは、もはや単なる道具の枠には収まらない、新しい存在になっていくのかもしれません。
私たち経営者はどう備えるべきか
では、このような大きな変化の波の中で、私たち個人事業主や中小企業の経営者は、どうすればよいのでしょうか。悲観的になったり、思考停止してしまったりするのは一番もったいないことです。大切なのは、この変化をどう自社のビジネスチャンスに変えていくか、という視点です。
まずは、難しく考えずにAIに触れてみることです。ChatGPTやClaudeを使って、日々のメールを作成させたり、新しいサービスのアイデアを出してもらったり、SNS投稿のネタを考えてもらったりするだけでも、その能力の一端を体感できます。
次に、情報収集を続けることです。私のような情報発信者のブログを読んだり、関連するニュースに目を通したりして、世の中の大きな流れを掴んでおくことが重要です。
そして最も大切なのが、自社の業務を今一度見直してみることです。「この単純作業は、将来AIに任せられるかもしれない」「このデータを活用すれば、AIで新しい顧客サービスが作れるかもしれない」といった視点でビジネスを棚卸ししておくことが、数年後の大きな差につながるはずです。
まとめ
今回ご紹介したジャック・クラーク氏の話は、少し先の未来のように聞こえるかもしれません。しかし、その変化の兆しは、もう私たちのすぐそばまで来ています。
世界中のトップ企業が、AIが社会を根本から変えると確信しているからこそ、国家予算レベルの資金が動いているのです。私たちは、まさに歴史的な変革期のど真ん中に立っています。
この大きな変化を「仕事が奪われる脅威」と捉えるか、「ビジネスを飛躍させるチャンス」と捉えるか。その視点の違いが、これからのビジネスの未来を大きく左右するでしょう。
これからも、皆さんのビジネスに役立つAIの最新情報や活用方法を分かりやすくお伝えしていきます。ぜひ一緒に学び、未来への準備を進めていきましょう。


監修者:岡田 直記
AIコンサルント / 「ナオキのAI研究所」所長
企業のAI活用を支援するAIコンサルタント。セミナーや法人研修、個人指導などを通じ、これまでに延べ100名以上へAI活用の指導実績を持つ。現在は、主に中小企業を対象としたAI顧問として、業務効率化や生産性向上を実現するための戦略立案からツール導入までをサポート。また、個人向けには月額制の「AI家庭教師」サービスを展開し、実践的なAIスキルの習得を支援している。
自身の「元大手営業マンでスキル0から独立した」という異色の経歴を活かし、ビジネスの現場目線と最新のAI知識を組み合わせた、具体的で分かりやすい解説が強み。AI技術がもたらす未来の可能性を、一人でも多くの人に届けることを mission としている。