ChatGPTに会社の情報を入れて大丈夫?情報漏洩を防ぐ3つの設定
AI活用コンサルタントのナオキです。中小企業の皆さんや個人事業主の方々へ、AIを使った業務効率化のお手伝いをしています。
「ChatGPTって便利らしいけど、うちの見積書とか顧客名簿を入れて、大丈夫なんですかね?」
これは、私が経営者の方から最も多くいただく質問です。そして、この質問をされる方は、決してAIに後ろ向きなわけではありません。むしろ使いたいからこそ、慎重になっている。その感覚は、経営者として全く正しいと思います。
ただ、この不安の正体を正確に理解している方は、実はとても少ないのです。「なんとなく危なそう」で止まって使わないまま。あるいは逆に、社員が各自のスマホで会社の情報を打ち込んでいる。どちらも、良い状態とは言えません。
今日は、従業員10名前後・社内にIT担当者がいない会社を想定して、「実際のところ何が起きるのか」と「最低限やっておくべき3つの設定」を、正確に、そして正直にお話しします。
そもそも「学習される」とは、何が起きているのか
まず、多くの方が心配されている「AIに学習される」とは何なのか。ここを整理しておきましょう。
「学習」とは、あなたが入力した文章が、AIの賢さを鍛える教材として使われることです。取り込まれると、その内容がAIの「知識」の一部になっていく可能性があります。打ち込んだ取引先の名前や単価が、巡り巡って別の誰かへの回答に断片的に顔を出すかもしれない——これが不安の核心にあるイメージでしょう。
ここで大事なのは、この扱いが「どのプランを使っているか」で完全に変わるという点です。ここを知らずに「ChatGPTは危険」と一括りにするのが、一番もったいない誤解です。
個人向けプラン(無料・Plus)は、初期設定のままだと学習に使われます
OpenAIの公式ヘルプには、個人向けサービス(ChatGPTなど)について「お客様のコンテンツをモデルの学習に使用する場合があります」と明記されています。つまり、無料版やPlus(個人課金)をそのまま使っている場合、あなたの会話は初期設定では学習の対象になっているということです。
ただし、これは設定でオフにできます。オフにすれば、それ以降の新しい会話は学習に使われません。ここが最も重要なポイントで、後ほど手順をお伝えします。
法人向けプラン(Business・Enterprise)は、最初から学習されません
一方、法人向けのChatGPT BusinessやEnterprise、そしてAPI(プログラムからAIを呼び出す仕組み)については、公式に「既定では、入力・出力のいずれもモデルの学習には使用しません」と書かれています。組織が自ら明示的に「提供します」と選択しない限り、初めから対象外です。
これを車に例えるなら、個人向けプランは自家用車、法人向けプランは社用車のようなものです。自家用車で営業に出ること自体は違法ではありませんが、事故が起きたとき、会社は把握も管理もできません。社用車なら、保険も点検も会社の管理下にある。同じ「車で移動する」でも、後ろにある仕組みがまったく違うのです。
最低限やるべき3つの設定
では、具体的に何をすればいいのか。ここからは、3つの設定について解説します。
設定1:「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする
これが最優先です。手順はこうです。
パソコンの場合、ChatGPTの画面で右上のプロフィールアイコンをクリックし、「設定」を開きます。その中の「データコントロール」を選ぶと、「すべての人のためにモデルを改善する」という項目があります。これをオフにしてください。
スマホの場合は、サイドバーメニューを開いてプロフィールアイコンをタップ、「データコントロール」から同じ項目をオフにします。この設定はアカウント全体に適用されるので、パソコンでオフにすればスマホにも反映されます。両方でやる必要はありません。
なお、オフにしても会話の履歴は今までどおり残ります。「オフにすると過去のやり取りが見られなくなるのでは」と心配される方がいますが、気にする必要はありません。
設定2:機密性の高い相談は「一時チャット」を使う
特に慎重に扱いたい内容——たとえば人事の相談、資金繰りの検討、取引先とのトラブル対応など——は、「一時チャット」という機能を使ってください。
一時チャットで交わした会話は、学習に使われず、履歴にも残らず、公式によれば30日後にシステムから削除されます。使い捨てのメモ帳のようなイメージです。ChatGPTの画面上部から切り替えられます。
ただし、後述しますが「消えるから何を入れてもいい」わけではありませんので注意してください。
設定3:会社として本格的に使うなら、法人プランに切り替える
社員が数名でも使うようになったら、法人向けのChatGPT Businessへの切り替えを検討してください。理由は3つです。第一に、先ほど述べたとおり初めから学習の対象外であること。第二に、誰がアカウントを持っているかを会社が管理でき、退職時にアクセスを止められること。第三に、社員が「自分の個人アカウント」で会社の情報を扱う状態——いわゆるシャドーIT——を防げることです。
正直に言うと、私が現場で最も危ないと感じるのは、学習の問題そのものよりも、この3つ目です。社員が自分のスマホの個人アカウントに会社の顧客名簿を貼り付けていても、経営者はその事実を知る術がありません。設定がオンかオフかも確認できません。退職しても、そのアカウントは本人の手元に残り続けます。これは、学習される・されない以前の問題です。
正直に言っておきたい、3つの注意点
ここまで対策をお話ししましたが、「設定さえすれば完全に安全」と言うつもりはありません。煽るつもりも、逆に安心させすぎるつもりもないので、正確なところをお伝えします。
1つ目は、学習をオフにしても、送ったデータが消えるわけではない点です。 学習の教材に使われなくなるだけで、サービスの提供や不正利用の監視のために、一定期間は保存されます。実際、OpenAIの公式ヘルプには、訴訟などの法的な事情によってデータの保持期間が影響を受ける場合がある、という趣旨の注記も掲載されています。「オフ=この世から消滅」ではないのです。
2つ目は、学習をオフにしていても、回答に「いいね(👍)」や「よくない(👎)」を押すと、その会話全体が学習に使われる可能性がある点です。 これは公式ヘルプに明記されている内容で、意外と知られていません。よかれと思って押した評価ボタンが、設定の例外になっている。機密性の高い会話では、評価ボタンを押さない習慣をつけてください。
3つ目は、これが本質だと思っているのですが、技術的な設定より、社内のルールのほうが効果的です。 どれだけ設定を完璧にしても、「何を入れてよくて、何を入れてはいけないか」が社内で共有されていなければ、いつか誰かが入れてしまいます。逆に、「個人名・口座番号・未公開の価格表は入れない」という一行のルールが全員に浸透していれば、リスクの大部分は消えます。
「その一行のルール」を、御社の実情に合わせて一緒に作れます。
今日、まずやる一歩
この記事を閉じる前に、ひとつだけやって欲しいことがあります。
それは、ご自身のChatGPTを開いて、設定→データコントロールを見てください。 そして「すべての人のためにモデルを改善する」が、いまオンになっているかオフになっているかを確認してください。
おそらく多くの方が「オンのままだった」と気づくはずです。その気づきこそが、最初の一歩です。そして次に、社員の方に同じことを聞いてみてください。「今、その設定どうなってる?」と。答えられない人がいたら、そこが会社の穴です。
ナオキの所感
講師・教育者の視点
研修で「AIは危ないから使うな」と教えるのは、実は一番簡単で、一番無責任な指導です。学習者が本当に必要としているのは、「どこまでが安全で、どこからが危ないか」という線引きの感覚だからです。包丁の使い方を教えずに「刃物は危ない」と言うだけでは、料理は永遠にできるようになりません。今回の3つの設定は、その線引きを体で覚えるための、最も具体的な入り口です。受講生の方には、まずこの設定画面を自分で開いてもらうことから始めています。
ビジネス活用の視点
中小企業にとって、この論点は「セキュリティの話」ではなく「意思決定の話」です。設定を確認するのに3分、社内ルールを一枚作るのに1時間。この程度の投資で、「AIを使わない」という機会損失から抜け出せます。逆に言えば、この1時間を惜しんで導入を止めている会社は、競合が月に何十時間も業務を短縮していく横で、ずっと足踏みを続けることになります。判断を先送りすることも、ひとつの判断です。そのコストは、目に見えないだけで、確実に発生しています。
業界動向の視点
各社が法人プランを「既定で学習しない」と明言する流れは、ここ数年で完全に定着しました。これは各社が善意で決めたというより、企業に導入してもらうためには、そう約束するしかなかったという競争の結果です。裏を返せば、個人向けプランと法人向けプランの差は、今後さらに開いていきます。「無料版で十分」と言えた時代は、業務利用に関しては終わりつつある、というのが私の見立てです。
まとめ
「ChatGPTに会社の情報を入れても大丈夫か」への答えは、「使い方次第で、大丈夫にできる」です。
やることは3つ。設定で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする。機密性の高い相談は一時チャットを使う。社員が使うようになったら法人プランに切り替える。そして、技術的な設定以上に、「何を入れないか」という社内の一行ルールが効きます。
不安を抱えたまま使わないのも、無防備なまま使うのも、どちらも会社にとって損です。3分で確認できることから、始めてみてください。
参考:How your data is used to improve model performance|OpenAI Help Center(2026年7月時点)
参考:Data Controls FAQ|OpenAI Help Center(2026年7月時点)
