AIに仕事を奪われる未来?問われるべきは人間の価値観

AI入門

AI活用コンサルタントのナオキです。

日々の業務効率化からSNS運用まで、AIの力を借りることで可能性は大きく広がります。私自身、AIのおかげで今までできなかったことに挑戦できたり、面倒な作業から解放されたりと、その恩恵を毎日実感しています。

しかし、AIの進化が加速する中で、「このままではAIに仕事を奪われてしまうのではないか」という不安の声を耳にすることも増えました。あなたも一度はそんな心配を抱いたことがあるかもしれません。

今回は、そんなAIと私たちの未来について、元Google幹部であるモ・ガウダット氏が鳴らす警鐘をヒントに、少し深く掘り下げて考えてみたいと思います。これは単なる技術の話ではなく、私たちの働き方や社会のあり方そのものに関わる、とても大切な話です。

AIが賢すぎるのが問題?いいえ、問題は私たち人間の中に

私たちは「AIが人間を超える知能を持ったらどうなるのか」という点をよく議論します。まるでAIという新しい生命体が、私たちを支配するのではないか、というSF映画のような世界を想像してしまいがちです。

しかし、モ・ガウダット氏は、問題の本質はそこではないと指摘します。彼によれば、AIの知能の高さ自体は問題ではありません。本当に問われているのは、そのAIを使う私たち人間社会の「価値観」だというのです。

少し考えてみてください。包丁は素晴らしい調理器具ですが、使い方を間違えれば人を傷つける道具にもなります。インターネットは世界中の人々を繋ぎましたが、一方で誹謗中傷やフェイクニュースといった問題も生み出しました。道具そのものに善悪はなく、それを使う人間の意図や社会の仕組みが、結果を大きく左右するのです。

AIも同じです。AIは、私たちが持つ価値観や目的を、ただ驚異的なスピードと規模で実現してくれる、いわば究極の道具です。だからこそ、私たちが今どんな価値観を持ち、どんな社会を目指しているのかが、未来を決定づける鍵となります。

今の社会のルールが、AIの力を暴走させるかもしれない

では、ガウダット氏が懸念する私たちの社会の「価値観」とは、具体的にどのようなものでしょうか。

一部の人が勝つためのゲーム

彼が指摘するのは、今の社会が「ごく一部の人がより多くを得るために、多くの人が限られたパイを奪い合う」という前提で成り立っているという点です。

これは、ビジネスの世界に身を置く私たちにとっては、ごく当たり前の光景かもしれません。どうすれば競合他社に打ち勝ち、より多くの利益を上げ、市場でのシェアを拡大できるか。私がお手伝いしている多くの経営者の方々も、日々そのための戦略を練っています。コストを削減し、生産性を極限まで高めることは、この競争社会で生き残るための必須条件です。

この「競争と効率化」を最優先する価値観が、今の私たちの社会を動かす大きなエンジンとなっています。

AIは最強の「生産性」ツール

ここでAIの登場です。AIは、この「生産性」を極限まで高めるための、まさに最強のツールです。

ガウダット氏は例として、「Airbnbのようなサービスを新しく作って」とAIに指示するだけで、AIがそのためのプログラムコードを書き、新しいビジネスを瞬時に生み出せてしまうほどの創造力を持っていると語ります。

私自身の経験でも、これまで数日かかっていた市場調査レポートの作成や、何時間も悩んでいたSNSの投稿文案が、AIを使えばほんの数分で完成してしまうことがあります。その生産性の向上ぶりには、正直なところ、驚きを通り越して少し怖くなることさえあります。

この驚異的な生産性を持つAIが、先ほどの「一部の人が勝つためのゲーム」という社会のルールと結びついたとき、一体何が起こるのでしょうか。

AIがもたらす豊かさは、誰のものになるのか

ここからが、ガウダット氏が鳴らす警鐘の核心部分です。

AIという強力なツールを手にした一部の企業や個人は、圧倒的な生産性で莫大な富を生み出すでしょう。例えば、たった一人の指示で動くAIチームが、何百人もの従業員が行っていた業務をこなしてしまうかもしれません。AIを活用したサービスは、人件費という最大のコストをほとんどかけずに、世界中に展開できます。

その結果、生み出された富は、AIを所有するごく一部の人々に集中します。一方で、これまでその仕事を担ってきた多くの人々は、その役割を失ってしまう。彼は、「その結果、私たち全員が仕事を失うことになりかねない」とまで警告しています。

AIが生み出す豊かさが社会全体に還元されるのではなく、勝者と敗者の格差を決定的に広げる装置として機能してしまう未来。これが、彼が最も恐れているシナリオなのです。

私たちが今、向き合うべき課題とは

では、私たちはこの未来に対して、ただ手をこまねいているしかないのでしょうか。私はそうは思いません。むしろ、AIという鏡を通して自分たちの社会のあり方を見つめ直す、絶好の機会だと捉えています。

大切なのは、AIの進化を止めることではありません。AIが生み出すであろう莫大な豊かさを、私たちはどのように分かち合い、どのような社会を築くために使いたいのか。そのルールや価値観を、社会全体で議論し、再構築していくことです。

例えば、AIによって効率化され、生まれた時間や富を、どう使うか。さらなる競争のために再投資するだけでなく、従業員の学び直しや、より創造的で人間らしい活動、あるいは地域社会への貢献などに振り分けるという選択肢も考えられます。

私たち個人事業主や中小企業は、巨大な資本を持つ大企業とは違う形でAIと向き合えるはずです。AIを単なるコスト削減の道具として見るのではなく、お客様との関係をより深めたり、新しい価値を創造したりするためのパートナーとして活用する道を探ること。それが、これからの時代を生き抜くための鍵になるのではないでしょうか。

あなたなら、AIがもたらす力を、何のために使いたいですか。

まとめ:AIは未来を映す鏡

今回は、モ・ガウダット氏の言葉をきっかけに、AIと私たちの未来について考えてみました。

AIは、それ自体が善でも悪でもありません。それは、私たちの社会が持つ価値観や欲望を、良くも悪くも増幅させて映し出す「鏡」のような存在です。もしAIが作り出す未来が恐ろしいものに見えるとしたら、それはAI自身が恐ろしいのではなく、私たちの社会のあり方に問題が潜んでいるからなのかもしれません。

技術の進化のスピードにただ驚き、翻弄されるのではなく、一度立ち止まって「私たちはどんな未来を望むのか」を真剣に考える。AI時代を迎える今、技術的なスキルを学ぶことと同じくらい、あるいはそれ以上に、この問いと向き合うことが重要になっていると感じます。

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岡田 直記 プロフィール写真

監修者:岡田 直記

AIコンサルント / 「ナオキのAI研究所」所長

企業のAI活用を支援するAIコンサルタント。セミナーや法人研修、個人指導などを通じ、これまでに延べ100名以上へAI活用の指導実績を持つ。現在は、主に中小企業を対象としたAI顧問として、業務効率化や生産性向上を実現するための戦略立案からツール導入までをサポート。また、個人向けには月額制の「AI家庭教師」サービスを展開し、実践的なAIスキルの習得を支援している。

自身の「元大手営業マンでスキル0から独立した」という異色の経歴を活かし、ビジネスの現場目線と最新のAI知識を組み合わせた、具体的で分かりやすい解説が強み。AI技術がもたらす未来の可能性を、一人でも多くの人に届けることを mission としている。

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