AIを活用したビジネスの効率化をお手伝いしているナオキです。いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
AIの進化は目覚ましく、私たちの仕事や生活をどんどん便利にしてくれています。業務の自動化や新しいアイデアの創出など、その可能性は計り知れません。私自身も、日々の業務でAIの恩恵を大いに受けています。
しかし、この素晴らしい技術の発展には、光だけでなく影の部分も存在します。特に最近、私が注目しているのが「デジタルの信頼性」というテーマです。AIが進化すればするほど、私たちは画面の向こうにある情報や人物を、これまで通りに信じることが難しくなっていくのかもしれません。
今回は、そんなAI時代における「信頼」について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
AIが揺るがす「本物」の境界線
AI技術の中でも、特に私たちの認識を大きく揺さぶるのが、本物そっくりの偽情報を作り出す技術です。これによって、何が本物で何が偽物なのか、その境界線が曖昧になりつつあります。
驚くほどリアルな偽情報「ディープフェイク」
皆さんは「ディープフェイク」という言葉を聞いたことがありますか。これは、AIを使って、ある人物の顔や声を別人のものに置き換えた、非常に精巧な偽の動画や音声のことです。一昔前の合成写真とは比べ物にならないほど自然で、専門家でなければ見分けるのが困難なレベルにまで達しています。
例えば、ある企業の経営者の顔と声を使って、偽のメッセージ動画が作られ、SNSで拡散されたとしたらどうでしょうか。その内容が「会社の業績が危機的状況にある」といったものであれば、株価は暴落し、取引先は離れていってしまうかもしれません。これは決して遠い未来の話ではなく、実際に海外では政治家や有名人を騙ったディープフェイクが問題になっています。
SNSを通じて情報が一瞬で広まる現代において、こうした偽情報のリスクは、個人事業主や中小企業の皆さんにとっても決して他人事ではないのです。
デジタル認証だけでは不十分?
これまで私たちは、オンライン上の本人確認を、IDやパスワード、最近ではスマートフォンを使った二段階認証といったデジタルの仕組みに頼ってきました。これらは確かにセキュリティを高める上で非常に重要です。
しかし、AIが人間の声や話し方、顔の表情までリアルに再現できるようになると、こうしたデジタル認証だけでは安心できない場面が出てくるかもしれません。例えば、オンライン会議の相手が、本当に契約しようとしている企業の担当者本人なのか。電話で緊急の送金を依頼してきた取引先の声は、本人のものなのか。そうした疑念が生まれる余地ができてしまったのです。
私自身、先日あるクライアントとオンラインで打ち合わせをしていた際に、ふと「この映像と音声がもしAIで作られたものだとしたら、自分は見抜けるだろうか」と考えてしまい、少しだけ不安になった経験があります。もちろん、そんなことはなかったのですが、技術的に可能であるという事実が、私たちの心理に静かな影響を与え始めているのを感じます。
信頼の原点回帰?アナログな確認方法の価値
デジタル技術への信頼が揺らぎ始めると、皮肉なことに、私たちは昔ながらのアナログな方法に安心感を求めるようになるのかもしれません。最先端の技術が普及するほど、原始的なコミュニケーションの価値が再評価される。そんな動きが、これからのビジネスシーンで起こるのではないかと私は考えています。
「顔を見て話す」ことの安心感
ビジネスにおいて、特に重要な契約や交渉の場面を想像してみてください。メールやチャット、オンライン会議だけで全てを完結させることも可能ですが、そこにはどこか希薄さが伴います。
これからの時代、最終的な意思決定の前には「一度、直接お会いして話しませんか」という提案が、これまで以上に重みを持つようになるかもしれません。実際に顔を合わせ、相手の目の動きや些細な表情、その場の空気感といった、デジタルでは伝わりきらない非言語的な情報を含めて相手を理解する。このプロセスこそが、揺るぎない信頼関係を築くための土台になるのではないでしょうか。
手間やコストはかかりますが、その一手間をかけることが、AI時代における何よりの「本人確認」であり、ビジネスを成功に導く鍵となり得るのです。
手書き署名が持つ「重み」
契約書へのサインも同様です。近年、電子署名サービスが普及し、契約プロセスは非常にスピーディーになりました。これは業務効率化の観点から見れば素晴らしいことです。
しかし、その一方で「手書きの署名」が持つ特別な意味も見直されるでしょう。一文字一文字、自分の手で名前を記すという行為には、その契約に対する覚悟や責任感が宿ります。デジタルでクリックするだけの署名とは、心理的な「重み」が違うと感じる方は少なくないはずです。
私自身も活動する中で、特に重要だと感じる契約を結ぶ際には、電子契約と並行して製本された契約書に自筆で署名し、相手に郵送することがあります。これは単なる形式ではなく、「このお仕事に真摯に向き合います」という私の意思表示でもあるのです。こうしたアナログな一手間が、結果的に相手からの信頼を深めることにつながると信じています。
AI時代を生き抜くための新しい信頼のかたち
では、私たちは未来に対して悲観的になるべきなのでしょうか。私はそうは思いません。大切なのは、デジタルを否定することなく、その特性を理解した上で、人間ならではのアナログな価値と組み合わせることです。
デジタルとアナログのベストミックスを探る
これからのビジネスオーナーに求められるのは、デジタルとアナログの「ベストミックス」を考える視点です。
例えば、日々のタスク管理や顧客データ分析といった定型的な業務は、積極的にAIを活用して徹底的に効率化する。そうして生まれた時間的な余裕を、お客様と直接会って関係を深めたり、手書きの感謝状を送ったりといった、温かみのあるコミュニケーションに使うのです。
私が専門とするCRM(顧客関係管理)の分野でも同じことが言えます。システム上で顧客情報をデータとして管理するだけでなく、そのデータをもとに「このお客様は最近お困りのようだから、一度電話してみよう」「記念日だから、ささやかなプレゼントを贈ろう」といった、人間的なアクションにつなげることが重要になります。
最終的に信じられるのは「人」
技術がどれだけ進化しても、ビジネスの根幹にあるのは、人と人との信頼関係です。AIは素晴らしいツールですが、あくまで人間を助けるための存在です。AIに仕事を任せきりにするのではなく、AIを賢く使いこなしながら、人間だからこそ提供できる価値を磨いていく。その姿勢が、これからの時代を生き抜く上で不可欠になります。
皆さんのビジネスでは、どのようにしてお客様や取引先との信頼を築いていますか。AIの導入を考える今だからこそ、改めて自社の「信頼の形」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
AIがもたらす未来は、決して冷たく無機質なものではありません。むしろ、AIによって効率化が進むからこそ、私たちは人間本来の温かさや直接的なつながりの大切さを再発見できるのかもしれませんね。
これからも、皆さんのビジネスに役立つAIの情報と、その付き合い方についてのヒントを発信していきたいと思います。
監修者:岡田 直記
AIコンサルント / 「ナオキのAI研究所」所長
企業のAI活用を支援するAIコンサルタント。セミナーや法人研修、個人指導などを通じ、これまでに延べ100名以上へAI活用の指導実績を持つ。現在は、主に中小企業を対象としたAI顧問として、業務効率化や生産性向上を実現するための戦略立案からツール導入までをサポート。また、個人向けには月額制の「AI家庭教師」サービスを展開し、実践的なAIスキルの習得を支援している。
自身の「元大手営業マンでスキル0から独立した」という異色の経歴を活かし、ビジネスの現場目線と最新のAI知識を組み合わせた、具体的で分かりやすい解説が強み。AI技術がもたらす未来の可能性を、一人でも多くの人に届けることを mission としている。

