AIを使った業務効率化やSNS運用のお手伝いをしているナオキです。
最近、個人事業主の方や中小企業の経営者の方から、「AIを導入してみたけれど、いまいち思ったような答えが返ってこない」「もっとうまく使いこなす方法はないの?」といったご相談をよくいただきます。ChatGPTをはじめとする生成AIは非常に強力なツールですが、その性能を最大限に引き出すには、実はちょっとしたコツが必要です。
そのコツとは、AIへの指示の出し方、いわゆる「プロンプト」に隠されています。そして驚くかもしれませんが、そのプロンプトの「順番」を少し変えるだけで、AIの回答精度が劇的に向上することがあるのです。
今回の記事では、誰でも今日から実践できる、AIの性能をぐんと引き上げるプロンプトの裏ワザについて、分かりやすく解説していきます。
まずは基本から!AIへの指示「プロンプト」の三種の神器
本題に入る前に、まずはプロンプトの基本的な構成要素についておさらいしましょう。AIに何かをお願いするとき、多くの場合、次の3つの要素を伝えることが重要だと言われています。
一つ目は「役割(Role)」です。これは、AIにどんな専門家やキャラクターになりきってほしいかを指定するものです。例えば、「あなたは優秀なマーケターです」とか「あなたは経験豊富な経営コンサルタントです」といった具合ですね。役割を与えることで、AIはその立場にふさわしい視点や知識で回答を生成しようとします。
二つ目は「指示(Task)」です。これは、AIに具体的に何をしてほしいのかを伝える、命令の部分です。「新商品のキャッチコピーを10個考えてください」や「クライアントへの謝罪メールの文面を作成してください」など、やってほしいことを明確に記述します。
そして三つ目が「具体例(Example)」です。これは、あなたが求めるアウトプットのイメージを、見本としてAIに示すものです。良い例や悪い例を見せることで、AIはあなたの好みや期待する品質レベルを学習し、より意図に沿った回答を生成しやすくなります。
一般的には、「役割」を伝えてから「指示」を出し、必要に応じて「具体例」を補足する、という流れでプロンプトを作成する方が多いのではないでしょうか。もちろん、この方法でも十分にAIは機能します。しかし、もっとAIのポテンシャルを引き出す方法があるとしたら、試してみたいと思いませんか。
常識を覆す?AIの精度が上がる魔法の順番とは
ここからが本題です。AIの回答精度をさらに高めるための裏ワザ、それはプロンプトの順番を「具体例」から始めることです。
つまり、「役割 → 指示 → 例」ではなく、「例 → 役割 → 指示」という順番でAIに伝えてみるのです。たったこれだけの違いですが、AIがあなたの意図を理解する深さが格段に変わることがあります。
なぜ「例」を先に見せるのが効果的なのか?
なぜ、例を先に見せるとうまくいくのでしょうか。少し人間のコミュニケーションに置き換えて考えてみると分かりやすいかもしれません。
例えば、あなたが部下に新しい企画書の作成をお願いするとします。いきなり「君は優秀なプランナーとして、来月の新商品キャンペーンの企画書を作ってくれ」と指示するのと、「これが、前回のキャンペーンで成功した企画書の見本だ。この構成やトーンを参考にして、君は優秀なプランナーとして、来月の新商品キャンペーンの企画書を作ってくれないか」と頼むのとでは、どちらがあなたの意図を正確に汲み取ってもらえるでしょうか。
おそらく後者ですよね。最初に具体的なゴールを見せることで、相手は「なるほど、こういう方向性で、このくらいのクオリティのものを作ればいいんだな」という明確なイメージを持つことができます。その上で役割と指示を与えられた方が、迷いなく作業に取り掛かれ、手戻りも少なくなります。
AIもこれと非常によく似ています。AIは、まず与えられた「具体例」をじっくりと分析し、「こういう文体、こういう情報の含め方、こういう構成が求められているんだな」というパターンを学習します。その学習が完了した状態で、「あなたはこういう役割で、これをしてください」という指示を受け取ることで、学んだパターンを正確に反映した、質の高い回答を生成しやすくなるのです。
私自身、クライアントのSNS投稿文をAIに作成してもらう際に、この「例から始める」方法を試してから、提案の質が目に見えて向上しました。以前は何度も修正をお願いしていた作業が、今では一発で「そうそう、これです!」と思えるような投稿文が出てくることも珍しくありません。
実践!プロンプトの順番比較ビフォーアフター
それでは、具体的なプロンプトの例で、その違いを見てみましょう。ここでは、あなたが運営するカフェの新商品「いちごたっぷり贅沢パフェ」のインスタグラム投稿文をAIに考えてもらうとします。
ビフォー:一般的な順番のプロンプト
あなたは経験豊富なSNSマーケターです。
私が運営するカフェのインスタグラム投稿文を考えてください。
ターゲットは20代から30代の女性です。
新商品「いちごたっぷり贅沢パフェ」の魅力をアピールしてください。
ハッシュタグもいくつか含めてください。
このプロンプトでも、AIはそれなりの投稿文を作成してくれるでしょう。しかし、文章のトーンや雰囲気があなたのカフェのイメージと少し違う、といったことが起こりがちです。
アフター:「例」から始めるプロンプト
以下は、私が理想とするインスタグラムの投稿文の例です。
「【春限定】とろける抹茶ティラミスが登場!濃厚なマスカルポーネと、京都宇治産の高級抹茶のほろ苦さが絶妙なハーモニー。一口食べれば、心もほっこり温まります。週末のご褒美にいかがですか? #カフェ巡り #抹茶スイーツ #限定スイーツ」
あなたは、上記のような投稿文を作成する、腕利きのSNSマーケターです。
このスタイルを参考にして、新商品「いちごたっぷり贅沢パフェ」の魅力を伝えるインスタグラム投稿文を3パターン作成してください。
ターゲットは20代から30代の女性です。
いかがでしょうか。アフターのプロンプトでは、最初に具体的な投稿文の例を示すことで、あなたが求める「文の長さ」「絵文字を使わないシンプルなトーン」「素材へのこだわりを伝える表現」「ターゲットに響く言葉遣い」といった細かなニュアンスを、AIは明確に理解することができます。
その結果、生成される投稿文は、あなたのカフェのブランドイメージにぴったり合った、より質の高いものになる可能性がぐんと高まるのです。
まとめ:AIとの対話を、もっと楽しく、もっと効率的に
今回は、AIへの指示、プロンプトの順番を少し変えるだけで回答の精度を上げる方法について解説しました。
ポイントは、従来の「役割 → 指示 → 例」という流れだけでなく、「例 → 役割 → 指示」という順番を試してみること。最初に具体的なお手本を見せることで、AIはあなたの意図をより深く、正確に理解してくれるようになります。
AIは、ただの作業を代行してくれるだけのツールではありません。こちらの伝え方次第で、最高のアイデアを出してくれる創造的なパートナーにもなり得ます。ほんの少しの工夫で、AIとの対話はもっとスムーズで、もっと楽しいものに変わっていくはずです。
ぜひ、今日からあなたのプロンプトにこの「例から始める」テクニックを取り入れてみてください。きっと、AIが生み出すアウトプットの質の変化に驚くことでしょう。
これからも、AIを活用してあなたのビジネスを加速させるための、実践的な情報を発信していきます。
監修者:岡田 直記
AIコンサルント / 「ナオキのAI研究所」所長
企業のAI活用を支援するAIコンサルタント。セミナーや法人研修、個人指導などを通じ、これまでに延べ100名以上へAI活用の指導実績を持つ。現在は、主に中小企業を対象としたAI顧問として、業務効率化や生産性向上を実現するための戦略立案からツール導入までをサポート。また、個人向けには月額制の「AI家庭教師」サービスを展開し、実践的なAIスキルの習得を支援している。
自身の「元大手営業マンでスキル0から独立した」という異色の経歴を活かし、ビジネスの現場目線と最新のAI知識を組み合わせた、具体的で分かりやすい解説が強み。AI技術がもたらす未来の可能性を、一人でも多くの人に届けることを mission としている。

