AI活用の専門家ナオキです。フリーランスとして、個人事業主や中小企業の皆さまに、AIを使った業務効率化やSNS運用のサポートをしています。
最近、チャットGPTをはじめとする生成AIの話題で持ちきりですね。私のクライアントの皆さまからも「AIで何ができるの?」「うちのビジネスにも使える?」といったご相談を毎日のようにいただきます。AIが私たちの仕事を劇的に変える可能性に、多くの方が期待と少しの不安を感じているのではないでしょうか。
そんな中、AI研究の世界で「ゴッドファーザー」と呼ばれるほどの重鎮、ジェフリーヒントン氏がAIの未来について非常に重い警鐘を鳴らし、大きな話題となりました。今日は、彼の言葉を手がかりに、私たち事業主がAIの未来とどう向き合っていくべきか、少し深く考えてみたいと思います。
AIのゴッドファーザーが語る未来
まず、ジェフリーヒントン氏について簡単にご紹介します。彼は、現在のAIブームの火付け役となった「ディープラーニング」という技術の基礎を築いた、まさに生きる伝説のような研究者です。長年GoogleのAI開発を率いてきましたが、AIがもたらす危険性について自由に発言するため、その職を辞したと語っています。
AI開発の最前線にいた第一人者が、自らが生み出した技術の未来に強い懸念を示している。この事実は、私たちが思っている以上に重く受け止める必要があるのかもしれません。ヒントン氏が最も懸念しているのは、人間を超える知能を持つ「超知能AI」の登場です。
これまでの技術革新とは何が違うのか
皆さんも「AIに仕事が奪われる」という話を一度は聞いたことがあると思います。そのたびに、「いや、蒸気機関やコンピューターが登場した時も同じことが言われた。でも、新しい仕事が生まれてきたじゃないか」という反論が出てきました。私も、これまではどちらかというと楽観的に考えていた一人です。
しかし、ヒントン氏は、超知能AIはこれまでの技術革新とは根本的に違うものだと指摘します。その違いはどこにあるのでしょうか。
「超知能」という未知の存在
これまでの技術は、あくまで人間の能力を拡張する「道具」でした。車は移動を速くし、コンピューターは計算を正確にしてくれました。しかし、それらは人間の指示がなければ何もできません。
一方で、超知能AIは、人間よりも賢く、自律的に思考し、行動する可能性を秘めています。例えば、私たちが何年もかけて解明できなかった科学の難問を数時間で解決したり、人間には思いもよらないような経営戦略を立案したりするかもしれません。
これは、単に一部の作業が自動化されるのとは訳が違います。人間の「知能」そのものが、AIに追い越されるかもしれないのです。まるでSF映画のような話に聞こえるかもしれませんが、AIの進化のスピードを見ていると、決して絵空事ではないと感じます。
ほとんど全ての仕事がなくなる可能性
これまでの技術は、肉体労働や単純な事務作業など、特定の仕事を置き換えてきました。しかし、知能で人間を上回るAIが登場した場合、影響は特定の職種にとどまりません。
ヒントン氏は「ほとんど全ての仕事がなくなる可能性がある」とまで言っています。これは衝撃的な言葉です。
例えば、私のようなコンサルティング業務も例外ではありません。今は私が経験と知識を基にAIツールを使いこなし、クライアントに価値を提供しています。しかし、もしAIが私よりも的確にクライアントの課題を分析し、最適な解決策を提案できるようになったら、私の役割はどうなるでしょうか。
「クリエイティブな仕事や、人と人とのコミュニケーションが重要な仕事は残るはずだ」という意見もあります。しかし、最新のAIはすでに美しい絵画を描き、心に響く文章を生成し始めています。ヒントン氏は、こうした「最終的には良い仕事が残るだろう」という楽観的な見方にさえ、疑問を投げかけているのです。
楽観論だけではいられない時代へ
では、私たちはこの未来に対して、どう向き合えばよいのでしょうか。ヒントン氏の警告は、ただ私たちを怖がらせるためのものではありません。彼が伝えたいのは、この大きな変化に対して、社会全体で真剣に議論を始めるべきだ、ということなのだと思います。
私たち個人事業主や中小企業の経営者にとっても、これは避けては通れないテーマです。
皆さんのビジネスでは、今どのようにAIを活用していますか?そして、その先にどんな未来を想像しますか?
例えば、AIの導入で業務が効率化され、利益が上がったとします。その利益は、従業員の給与や新しい事業への投資に向けられるでしょうか。それとも、さらなるAIへの投資に向けられ、結果的に人間の働く場所が減っていくのでしょうか。
AIが生み出した莫大な富が、一部の巨大企業やAIの所有者に集中し、社会全体の格差が極端に拡大する未来も想像できます。これは、私たちのビジネスのあり方だけでなく、社会の仕組みそのものを考え直さなければならない問題です。
今、私たちが考えるべきこと
ヒントン氏が鳴らした警鐘は、AIというパワフルな技術を、私たちはどう使いこなし、どう制御していくのかという、人類共通の課題を突きつけています。
もちろん、明日すぐに全ての仕事がなくなるわけではありません。悲観的になりすぎる必要はないでしょう。AIは、私たちのビジネスを成長させ、生活を豊かにしてくれる素晴らしい可能性を秘めています。現に私も、AIのおかげで以前よりずっと効率的に仕事ができていますし、新しいアイデアを得ることもできています。
大切なのは、思考停止に陥らないことです。「AIは便利なツール」という側面だけを見るのではなく、その先にある社会の変化まで想像力を働かせること。そして、その変化の中で、自分たちのビジネスや役割をどう適応させていくかを考え続けることです。
AIを正しく理解し、そのリスクにも目を向けながら、賢く付き合っていく。これからの時代を生きる私たち経営者には、そんな視点が不可欠になるでしょう。
AIの専門家として、私も皆さんと一緒にこの大きなテーマについて学び、考え続けていきたいと思っています。今後も、こうした少し未来の話も含め、皆さんのビジネスに役立つ情報をお届けしていきます。